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Yahoo!基金助成事業報告「未来をひらくプロジェクト」

美しい海を守る「ヒーロー」

夏日の陽光と海のブルーが鮮やかな、2015年4月下旬の三陸海岸。赤と黒のいかにも怖そうな出で立ちの大男が、船上に現れました。彼は、海中を掃除する、三陸ボランティアダイバーズ代表の佐藤寛志さん。漁協と組んで海の掃除を続け、「くまちゃん」の愛称で親しまれる「海のヒーロー」です。あの日から4年が経ち、海の中はどう変わってきたのでしょうか。

「きれいになった」岩手県の海

三陸ボランティアダイバーズが取り組む活動 岩手県大船渡市の越喜来(おきらい)湾は、ホタテとホヤの養殖が盛んです。養殖いかだがずっと先まで連なる海に、佐藤さんらダイバーが潜りました。待つこと約15分。佐藤さんは、小ぶりな漁網を持って船上に上がりました。

「これ以外は(がれきは)何もなかった。きれいになりましたね。海が荒れたらひっかかるのでとりました」と、漁師の細谷靖浩さんに海中の状況を伝えます。「今年は海藻が多くて、海がきれいですね」。

ダイバーは水深約20メートル、場所によってはもっと深い海底に潜ります。ドライスーツと呼ばれる潜水に適したスーツに、沈むために10キロのおもりを身につけます。空気の量を調整して深さを調整します。

 佐藤さんが撮影した海の動画映像を見せていただきました。海面からぶら下がるロープについたホタテ貝の群れが、気持よく泳いでいました。

漁師「非常に助かっている」

三陸ボランティアダイバーズが取り組む活動 佐藤さんは、隣の陸前高田市でダイビングショップを経営しています。震災当初は救援物資の配送で震災支援を始めましたが、ダイバーが貢献できる活動として翌4月、大船渡市の漁港で海に潜り始めました。

当初は一日で、2トントラック20台分の漁具などがれきが引き上げられたこともあったといいます。岩手県宮古市から宮城県石巻市まで直線でも150キロに及ぶ海岸のうち、約70カ所でのべ4000人がボランティア参加しました。

海がきれいになり養殖が再開したとしても、波が荒れて海底から新しい「がれき」が現れて、養殖いかだを傷つけてしまうこともあるといいます。そのため定期的な海底のチェックは欠かせません。また深い海は、潜水病の危険も伴います。

ホタテは三陸の貴重なブランド資源です。去年から本格的な出荷作業も始まりました。細谷さんは「非常に助かっている」とダイバーに信頼を寄せます。甘み豊かな湾のホタテ貝が、しっかりと育っています。

一方、震災5年目となったいまも、広大な被災地の海の中には、「がれき」が手つかずで残るところも多いといいます。ダイバーが連日潜ってきましたが、ボンベなど機材のメンテナンス費用はかさみ、引き上げたがれきの処理に費用がかかるといいます。

「世界の海より美しい」三陸の魅力

三陸ボランティアダイバーズが取り組む活動 佐藤さんは世界の海で潜ってきましたが、「世界中の海を見た人でも、三陸の海はおもしろい」といいます。

特徴は、海の「表情」が四季で変わること。海藻の生え具合や魚の群れが、四季を通じて変化するのです。熱帯のほぼ変わらない海と違い、日本の誇る風土が、海の中にも四季を体現しているのです。

「春は海藻が育ち、鮮やかな緑や赤色で草原のようです。夏は、カンパチやマンボウなど、魚の群れの回遊に出会えます。秋は産卵の季節。サケの産卵が見られるし、アイナメの卵が宝石のように輝き、『世界一きれい』と思えるぐらいです。冬は海藻が減りますが、はるか先まで見渡せる透明度が魅力ですね」。

ボランティアダイバーにとって、魅力はまだあります。

「ホタテのロープを海中から見ると、まるでカーテンのような美しさです。『どのような場所で作られているか』が実感できます。しかも海から上がり、船や港で新鮮なまま食べるのは最高です。だから、リピーター客が増えています」。

今後のまちづくり。そこに関われる

三陸ボランティアダイバーズが取り組む活動 ダイバーでなくても、活動を楽しむことはできます。

「海岸や河川の清掃など、海中以外のボランティア活動もあります。漁師と一緒に船に乗り、養殖いかだを見たり漁業体験をして、とれたての魚介類が味わえる。海が近く感じられるし、現地での『食べて応援』は楽しいですよ」と佐藤さん。

ダイバーと漁師は、どちらも海を仕事場にしますが、地元漁師からみて「ダイバー=密漁者」という認識も根強いといいます。

「市街地に近い海岸など、まだ清掃が行き届いていない浜もある。海の中は見えないので、自分たちの海がどうなっているか、地元の人でも知りたいニーズはまだまだあるはず」と、より広範囲な活動に期待を寄せます。地元や観光客のためにも、浜ごとの写真や動画を撮りためて、記録も積み重ねていきたいといいます。

三陸ボランティアダイバーズが取り組む活動 清掃できれいになった浜では、漁業再生など「復興」のお手伝いも始まっています。ネーミングが素敵な越喜来湾の「恋し浜」(小石浜)では、三陸鉄道の駅前に小さな店を作る計画です。恋し浜駅の待合室は、ホタテ貝が絵馬として天井から床までびっしりと吊されている「絵馬掛け」がある観光名所です。

三陸復興に欠かせない漁業の再建。三陸の美しい海を取り戻すため、今日もヒーローやヒロインが、海の中を「パトロール」しています。

特定非営利活動法人 三陸ボランティアダイバーズ

東日本大震災で被災した三陸沿岸地域の復興をお手伝いするダイバーの集まりです。私たちは三陸の漁業再興を応援し、美しい海、河川を取り戻すために活動を続けていきます。

三陸ボランティアダイバーズでは現在、以下の支援を求めています。

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