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Code for Japanインタビュー

Yahoo!基金では毎年助成プログラムを実施し、非営利団体が進めるプロジェクトの活動支援を行っています。
2013年度は、「地域課題解決の為のシビックテック活用コミュニティ育成プログラムの構築と実施」活動を行う一般社団法人コード・フォー・ジャパン(Code for Japan)(外部リンク)を助成対象団体の1つとして選定しました。
今回、その代表理事である関 治之さんにお話を伺いました。

地域の課題解決にフォーカスした理由

Yahoo!基金事務局(以下、事務局):地域の課題解決にフォーカスした動機、団体設立の趣旨を教えてください。

Code for Japan代表理事・関さん(以下、関): 東日本大震災の後、「ITを使って地域の課題解決をやりたい」というモチベーションを、私自身がずっと持ち続けています。

Code for Japanの前身のひとつとなったのは、「被災地でアイデアソン/ハッカソンをやって課題を発見し、ITで解決しよう」という趣旨の「Hack For Japan(外部リンク)」という活動です。ITによる課題解決は「モノを作って終わり」ではなく、その後いかに運用するか」が重要ですが、その運用を担える組織として地域の自治体やNPOを巻き込むことが大きなポイントになります。この体制を実現しているのが米国のNPOであるCode for America(外部リンク)で、それを手本にCode for Japanを設立しました。

事務局:地域の自治体やNPOは、どういった点において、ITを活用した地域課題解決サービスの運用主体として適しているのでしょうか。

関:前身となった復興支援の活動経験から、地域の自治体やNPOの“改善感度”は非常に高いと考えます。例えば、避難所の情報を紙でなくデータで公開すれば、ウェブでの確認が可能となるため電話での問い合わせが減り貴重な電話回線を確保できる、支援物資や銭湯の営業再開案内などウェブ上の情報をマッピングしていけばボランティア活動がより円滑になる、一度データを開示するとさらに派生サービスが生まれる。こうした体験を通じて内閣府をはじめ関係省庁にはオープンデータへの理解がうまれ、「次回からこの種のデータは開示したほうがよい」というコンセンサスが醸成されつつあります。

シビックテックの第一歩は「必要なものは、自分たち自身で作る」

事務局:Code for Japanは、現在15の地域コミュニティを「ブリゲイド(Brigade)」と呼んでその活動を支援しています。パートナーシップ対象地域の選定基準は何ですか。

関:定期的に月1回以上活動すること、過去に3回以上イベント実績があること、オープンな会合で誰でも参加できること……と、今のところはハードルを低くしています。もちろん、シビックテック(ITによる地域課題の解決活動)は、われわれの支援がないと始められないものではありません。

事務局:ブリゲイド方式での支援に関連し、Code for Japanは、シビックテックの「標準化」を目指していると伺いました。

関:標準化には2つの意味があり、1つは活動自体の類型化です。例えば、シビックテックに挑戦する場合は、まず旗を立てましょう、オープンで誰でも参加できるようにしましょう、自治体と対話をするにはこういう機会を持ちましょう/利用しましょう…と活動の類型を作り、事例を紹介します。

もう1つは技術的な標準化です。例えば「5374(ゴミナシ).jp(外部リンク」というアプリケーションを各地で作り始めていますが、これはもともと、ブリゲイドの1つであるCode for Kanazawa(⾦沢)が作成し、その後⼀緒にプロジェクト化したものです。オープンソースのソフトウェアなので、どの町でも利用でき、機能拡張も可能です。

事務局:「5374.jp」と同様のサービスは既にインターネットで散見されますが、他と違うところはありますか。

関:確かに機能が似たサービスは数多くありますが、あってもいいと思います。われわれは、「地域の課題解決は『自分たちが必要なものは、自分たち自身で作る』ことが第一歩」と考えています。

われわれの取り組みで言えば、オープンソースで誰でも使える、誰でも手を入れられるエコシステムを作るということが、営利企業が作るパターンと違います。自治体がお金を払って第三者に制作を依頼してもいいのですが、オープンソースの文化が拡大すれば、自分たちで作れる範囲が広がるでしょう。

事務局:良いハッカソンと悪いハッカソンがあると思いますが、各地のブリゲイドをコンサルティングしている立場から見て、その差はどこにあると思いますか。

関:重視しているのは、当事者(ツールを使う人)が参加していることです。開発チームに参加しなくてもよいのですが、アイデアソンでは必ず当事者から話を聞くこと、実際に使用するところまでを設計することが重要です。

助成金に頼らない団体運営に向けた「フェローシップ」

事務局:開発者は潤沢に確保できているのでしょうか。

関:もっと開発者がほしいという地域が多いようです。

事務局:そうした地域に開発者を派遣するスキームはありますか。

関:イベント講師の派遣は既に実績があります。またCode for Namie(浪江)(外部リンク)に、1年間という長期にわたってエンジニアを派遣するプロジェクトに取り組んでいます。特殊なケースではありますが、国の被災地支援の枠組みで、Code for Japanが選んだ3人を省庁が採用する形式をとっています。われわれはこれを「フェローシップ」と呼んでいます。

事務局:将来的には、助成金に頼らない団体運営が可能なのでしょうか。

関:まさに推進しているところです。浪江のような自治体と協力したフェローシップは事業として、今後も進めていきます。

一方で「コーポレートフェローシップ」も検討しています。これはCode for Japanのコーディネートで、企業が自治体へ数名を数カ月派遣するというものです。オープンデータ戦略の立案や推進、地域の開発会社と共同でのハッカソンやアイデアソン、開発など活動は多岐にわたると思います。

事務局:「コーポレートフェローシップ」の主なねらいは何でしょうか。

関:企業にとっては、社員の研修のような位置づけでもいいでしょうし、自治体と関係を作り新しいビジネスチャンスが生まれる機会と考えてもいいかもしれません。

事務局:Code for Japanは、自治体との連携に深い知見をお持ちのようですね。

関:Code for Japan の3人の理事のうち1名が、自治体職員から研究者に転進という経歴です。彼はもともと助成をする立場だったので、自治体側の要望もよく知っています。後日「お金を返せ」と言われないよう、厳格に運用していますね。

投資家を巻き込んでシビックテック拡大を

事務局:もっと予算があればやりたい、と思うことはありますか。

関:「ソーシャルイノベーターとして地域の課題解決に貢献する会社を作りたい」という人々を支援したいと考えています。例えば、コワーキングスペース(独立した事業主が共有して仕事をするスペース)を作り、シビックテックを活用したいと思う起業家を集め、自治体を呼んでハッカソンやアイデアソンを実施する……、われわれはメンターとしてプロジェクトを支援するだけでなく、投資家を呼んでビジネス拡大の支援もすると。

事務局:この分野をホットだと思う投資家はいるのでしょうか。

関:まだごく少数かもしれません。IT系投資は過熱していますが、ソーシャルイノベーター系は「上場」のように明確な投資のイグジットプランを描きにくい。海外だと関連財団が数多くあって、社会的インパクトがあれば投資する人々がいます。しかし日本には、ごく少数の財団や、Yahoo!基金のような取り組みはありますが、海外のようなエコシステムはありません。

より多くの投資家が単なる寄付ではなく投資として、巨額のリターンは出ないがランニングはする、社会的インパクトが出せる企業に投資の価値を見いだしてくれると素晴らしいですし、Code for Japanは自らそういうネットワークを作っていく必要があると思います。

事務局:投資家に対するアピールでいま必要なものは何ですか。

関:「鶏が先か、卵が先か」ではありますが、それをやれるだけの体制かと思います。今回のYahoo!基金の助成によって、特定のプロジェクトを安定稼働する体制ができましたが、それ以上に、フルタイムでCode for Japanのことだけを考えて、広報宣伝もできる体制を作る必要があると考えます。

日本国内で国際カンファレンスを主催

事務局:Yahoo!基金の助成を受けた目的と、助成されたプロジェクトの進ちょくを教えてください。

関:ブリゲイド支援は目標以上にうまくいっています。ハッカソンやアイデアソンの開催地域は4都市を超えていますし、参加全団体のイベントも開催(2014年8月)(外部リンク)しました。

助成金の一部を人件費としてコミュニティマネージャーを雇ったのですが、彼女の働きが大きかった。体制の厚みができたところで浪江のフェローシップが実現し、そのプロジェクトをもって、国際カンファレンス「Code for America Summit 2014」(2014年9月)に講演者として招待されました。

また、国内での国際カンファレンス(2014年10月)も主催しています。海外の関係団体だけでなく、国内の自治体や政府関係者も呼び、「シビックテックは持続的な地域活動として有効である」と、PDCAの輪に参加いただけるようアピールしたいと考えています。

関 治之
一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事

1975年生まれ。大手ソフトハウスでの金融系システム構築などを経て、2009年に「Georepublic Japan」社を設立。11年の東日本大震災の後、震災復興を支援するために立ち上げられた復興支援サイト「sinsai.info」の総責任者に。米国でエンジニアが自治体の効率化に協力する「Code for America(コード・フォー・アメリカ)」の活動に触発され、13年に「Code for Japan」を設立。

取材日:2014年8月21日 聞き手:伊藤咲子

※内容はすべて取材当時のものです。

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