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東北復興新聞インタビュー

Yahoo!基金では毎年助成プログラムを実施し、非営利団体が進めるプロジェクトの活動支援を行っています。
2012年度は、東北復興新聞を運営するNPO法人HUGを助成対象団体として選定しました。
今回、その代表理事である本間勇輝さんに活動内容などのお話を伺いました。

基金事務局、茂木(以下、茂木):
本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
早速ですが、どのような活動をされているのかご紹介ください。

HUG代表理事、本間(以下、本間):
東北復興新聞という業界紙を紙とウェブで発行しています。復興に関わる活動をしている団体、企業向けに発行しているB2Bメディアです。2012年1月に創刊しもうすぐ2年、現在の発行部数は約4,000部です。
メインターゲットは、被災自治体と呼ばれる東北3県の自治体の方、被災された事業者の方、東京などから支援を行う支援企業、復興庁を始めとした関係省庁の方、あとはメディアの方、そういった方々です。
コンセプトは、「良き事例の共有」です。同じような課題に各地が取り組んでいらっしゃいますので、解決につながるヒントになるような良い事例を紹介していくことを目指しています。

茂木:
そもそも、東北復興新聞を発行するきっかけは何だったのですか。

本間:
震災が起きたときは、海外を旅していました。日本へ戻ってきたのは、2011年10月になります。
帰国した頃には、初期の混乱期は終わっていて、よく“フェーズが変わった”という言い方がされますがちょうどそんな時期。現地の課題とそれに対する施策“情報連携”といったキーワードが出てきたタイミングでした。
マスメディアからの情報はたくさんあったのですが、復興に閉じてターゲットをB2Bに絞ったメディアはなかったので、そこに取り組んでみたら何が起こるかな、というのがきっかけでした。
2011年10月から何度か東北に通ってヒアリングを重ねて、12月くらいには発行のめどがたって、2012年1月に創刊という流れでした。

茂木:
東北復興新聞のコンセプトは「良き事例の共有」とのことですが、効果という点から一番の目的、狙いというとどんなところですか。

本間:
最初は、横のつながりですね。大手メディアだけで伝えられることは、ごく一部分です。東北復興新聞が、横連携を生むきっかけになりたかったのです。
例えば、岩手県のどこどこで仮設住宅についてすごくいい運営方法をしているらしい、だったら会いに行ってみよう、質問してみよう。そういう動きをしてもらいたい。現地に行くことでわかることって多いと思います。現地に行くことを促進したいというのが一番の狙いでした。

茂木:
印象的な反響や効果があれば教えてください。

本間:
さまざまな読者がいらっしゃいますが、中でも企業のCSR部門の方々が喜んでくださっている声をよく耳にします。
フェーズの変化が起こる中で、初期はボランティアという分かりやすいニーズだったと思います。ところが、ニーズが変化していく中で、どのような支援をしたら良いのか分かりづらくなってきていました。そのタイミングで、先進的な支援の事例を紹介していた点が評価されました。現場感のある情報を載せている、ヒントになったという声をいただきました。
最近は復興現場をよく知る人間と見られるようになりました。いろいろな所に呼んでいただいたり、メディアに寄稿させていただいたりする機会が増えました。

いまでは、新しい視点や情報を復興に直接関わってこなかった人たち、東北復興新聞の購読者ではなく、その周囲にいた人たちに向けても発言できるようになりました。手応えを感じています。
ウェブ版の東北復興新聞の記事は現在、Yahoo!ニュースにも配信されています。トピックスを担当されている方が復興に深い関心をお持ちで、ときどき僕らの記事を取り上げてくださる。東北復興新聞というメディアが存在することで、復興の現場を感じられる情報を多くの方に伝えられる。これは、素直にうれしいですね。

茂木:
時間の経過とともにフェーズが変わりニーズが変化する。それを、東北復興新聞を通じてタイムリーにつかむことができる。これは、とても大切なことですね。
東北復興新聞は紙とウェブで発行されていますが、ウェブ版の果たす役割、ウェブならではといった点はありますか。

本間:
ウェブは、メディアとしてよりも、記事単位に読まれるというのが特徴です。先ほどのYahoo!ニュースの話になりますが、記事がダイレクトにシェアされる。共感を生む記事にはいいね!が付き、それが手応えにつながります。紙では得られない大きな特徴です。
それから、東北復興新聞を創刊し始めの1年半ほどは、復興に直接携わっている“中の人”のためになる情報、連携を促進したいという目的でやってきました。ところが、フェーズが変わっていく中で、僕らが読者と定義していた復興にコミットしている方々は、どんどん減ってきています。
そして今現在、復興に関わリ続けている方々は多くの場合Facebookでつながってきています。見方を変えれば、東北復興新聞というメディアでつなげていくという価値は相対的に減ってきているとも言えます。もろちん、その最初のきっかけにはなったと思いますが。
今後、僕らの役割は外に向かって行くんだろうなと改めて思います。復興の初期はいっぱいメディアがありました。世の中の関心もたくさんありました。新参者の僕らが、その中で一定の役割を果たすことは難しかった。
ところが、今現場に通い続けている人たちが減ってきている中で、情報発信し続けている人たちも減ってきています。継続している僕らの外に向けた情報発信の価値は、相対的に上がってきていると思います。

茂木:
徐々に関心が失われていく中、東北復興新聞は変化に対応し、継続しているところが素晴らしいと思います。

本間:
継続している中で、東北復興新聞の枠には収まらない情報も出てきています。そこで、TOMORROWというオピニオンサイトを始めました。ウェブオンリーなので、字数を気にせず詳しく伝えることができます。
情報発信と一言でいっても、紙で届けたい人とウェブで届けたい人がいます。紙とウェブ、臨機応変に使い分けて情報発信できるところにも手応えを感じています。

茂木:
先ほど、フェーズが変わっていくというお話がありましたが、記事はどのように変化させていますか。

本間:
分かりやすい事例で言いますと「他地域に学ぶ」というコーナーを開始しました。
従来は、良い事例を共有しようということで、隣でやっているやり方を知ろうよと紹介していたのですが、フェーズの変化とともに被災地に閉じず、日本各地に事例を求めるようになりました。
これは、被災地が向き合う課題が変化して、そこに限ったものではなくなったという背景があります。向き合っている課題が、全国各地で共通している課題に移行してきています。過疎化であったり高齢化であったり街づくり、産業復興であったり。そこで、全国のなかから良い事例を見つけて紹介していくことを始めています。
これが、内容が普遍的な課題なだけに人気が高いんです。しかも復興とは直接関係のない、全国の方が興味を持って読んでくれるようになりました。

茂木:
現地に何度も足を運んでいると思いますが、復興に対しては率直にどんな印象を持っていらっしゃいますか。

本間:
たまに「復興が進んでない」とさらっと言う方がいらっしゃいますが、何を持って復興と言っているのでしょうか。
目に見えて分かりやすい住宅まわり、更地になったところがいまだに更地のままじゃないかというところはその通りなのですが、それが遅いのか、遅れているのかはいろんな考え方があると思っています。
目に見えるものの手前にある調整作業というのが、現地にいると膨大であることがわかります。前例のないことにチャレンジしながら取り組まれているわけです。また、これまで街づくりに対して声を上げてこなかった街が、声を上げ始めている事例がいくつもあります。
一方で、住宅がまだ建たない、目に見えるものがまだ少ないということも事実です。地権者と連絡がつかないとか、住民合意がとれないとか、問題は多い。ただ、それを僕は遅いとか遅れているとは一概には言えないと思っています。
目に見えないところでは進んでいると思うし、震災以前その地域には無かった新しいことが起きていると思います。だから、ぜひ多面的に見てもらいたいと常に思っています。5年10年のスパンで地域がどうなっていく、どうなったらハッピーなるのだろうという視点で見てほしいと思います。

茂木:
Yahoo!基金の助成プログラムはIT助成という特徴を打ち出しています。復興に向けて、今後どのようなIT利活用が求められていくと考えられますか。

本間:
あたり前のことですが、ウェブはコストのことを気にせず情報発信できる媒体という特徴があります。SNSは無料で使えます。復興で活動している団体の多くは、Facebookページを持っています。
しかし、コストが少ないからとりあえず始めてみるけれど、読者数で伸び悩んでいるところが多いのも事実です。コンテンツのクオリティであったり、デザインであったり、そこがまだまだな所が多いという印象です。
情報発信という意味でIT活用は大前提で、ITだけどテクノロジーに依存するということではなく、いかにコンテンツを工夫するか、デザインとか見え方にどれだけ気を配れるかとか。SNSであればコミュニケーションの部分、いつどのような返信をするのか等、そういうところが重要だと感じています。

茂木:
復興におけるNPO等の公益団体が果たす役割についてはどうお考えですか。

本間:
震災直後のボランティアは、非常に大きな役割を果たしたと思います。これは間違いないですし、復興庁の発表資料の中でも頻繁にNPOという文字を目にします。
ボランティア元年と言われた阪神大震災、そして今回の震災を契機に、NPOの地位というのはすごく高くなりました。行政機能が今後強くなっていくとは考えづらい中で、公益的団体が担う役割がとても増えてきていると思います。
ただ一方で、ジレンマといいますか、難しい時期にあると思っています。社会からの認知はまだ弱いですね。NPOってどこか胡散臭いっていう偏見もあるし、残念ながらそういう団体がいるのも事実です。
世の中の企業が当たり前にやっていること、稼ぐこととか、合理的に目標設定してマネジメントするとか、そういうことができない団体が多いことが問題です。プロフェッショナルとして、きちんとマネジメントされた集団であるべきです。多くの非営利セクターが直面している課題だと思います。

茂木:
最後に、今後の活動について教えてください。

本間:
東北復興新聞は、一般の方々ではなくリーダーと呼ばれている方々にインタビューしてきました。そこで培ったネットワークは、僕らの一番の強みになりました。
東北復興新聞をきっかけとして、今では復興庁と一緒にお仕事をやらせてもらっています。復興現場の情報発信は今後も続けていこうと考えています。
ただ一方で、僕らの団体は中間支援団体なので、活動している人の発信をお手伝えする立場でしかない。2年、3年経過する中で、復興から新しいビジネスや取り組みが生まれないといけないフェーズにきているという強い思いもあります。
風化をさせないというか、関心の継続もしくは復活、一人でも多くの方々に東北への関心を持ってもらいたいという思いがあります。

その中で、「東北食べる通信」という新しい具体的な取り組みが生まれました。この取り組みはHUGではなく、岩手で出会った、すごく面白い人が代表を務める団体が行っていて、僕は理事として参加しています。
よく言われることですが、いま復興が向き合っているのは、もともとその地域が抱えていた課題で、震災に関係ない課題です。多くの地域で主要産業である一次産業が疲弊しています。そこで、僕らはその課題を解決するための仮説を立てました。「消費者を変える」ことです。
東北食べる通信は、誌面で特集した食材、特集で紹介する生産者がつくる食材が付いてくるという新しいタイプの情報誌です。いま1,000人を超える読者が定期購読しています。イノベーターないしはアーリーアダプターと言っていい1,000人です。彼らは、とても意識が高い。お金で食べ物を買うだけじゃない、消費者も変わらなければいけないというフィロソフィーを僕らと共有している人たちです。
Facebookに読者専用のグループがあります。その食材を使ったレシピを交換しあっています。でも、読者の皆さんはレシピの交換をしたくて集まっているのではなく、生産者とつながりたがっているんです。こうやって食べたよ、おいしかったよと直接伝えたいんです。
これまでのショッピングサイトは、チャネルは用意されているのですが、生産者と直接つながる場ではなかったと僕らは捉えていて、そうするとお金とモノのやりとりに留まってしまう。値段で比べられてしまうんです。
僕らは、生産者と消費者を直接つなげることで「消費者を変える」ことに挑戦しています。

茂木:
いいですねぇ。お話を伺っていて、離れた東北に行きつけのお店があるような、そんな感覚を覚えました。

本間:
行きつけどころか生産者ですからね。こういう取り組みを通じて第二のふるさとみたいなものを作ってもらえたらとも考えています。
東北の課題解決だけでなく、都市の課題解決にもつながるということを僕らは言っています。都会の人たちにとって、ふるさとがある価値は高いと思います。それを食を通じてやっていきたい。
東北復興新聞を通じたつながりから新しい企画が生まれたというのは、僕らにとってとてもうれしいし、続けてきてよかったと実感しています。

茂木:
東北食べる通信、とても興味がわきました。
本日は、ありがとうございました。今後の更なるご活躍、期待しています。

本間:
こちらこそ、ありがとうございました。

《本間さんプロフィール》
NPO法人HUG代表理事:本間勇輝
富士通(株)入社後、2005年(株)ロケーションバリューの創業に携わる。後に同社取締役COO就任。2009年同社退社後、妻と2年間世界中をまわる。旅先で実施した社会貢献活動は後に書籍『ソーシャルトラベル』(ユーキャン学び出版)として出版される。2011年10月帰国の後、NPO法人HUGを創業。『東北復興新聞』の発行の他、NPO法人東北開墾の理事として『東北食べる通信』の発行にも携わる。

《インタビュワー》
Yahoo!基金事務局 茂木 亜紀子

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